冷えた頬/父親で理事長(47)×養子で講師(26)/年の差学園モノ?
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理事長室の扉をノックする。「どうぞ」という声を聞いて、深呼吸を一つしてからドアノブに手をかけた。分厚い扉を開けると、真正面の机に悠然と手を組んで座っている『理事長』がいた。
「お呼びですか、理事長」
「ああ。単刀直入に訊くが、君のクリスマスの予定はどうなってるんだ? 桐嶋くん」
本当に単刀直入だな、この人は。遠回しに言っても無駄ってことをわかってるんだろうが。
「クリスマスも正月もありません。冬期長期休暇に入りますから、この間に三学期の学習指導要項と、あと自分の論文をひとつ仕上げる予定です。それと年賀状の準備でいっぱいいっぱいですよ」
「ほう。仕事熱心なのはいいことだが、それでは休暇にならないだろう――パーティの予定の一つもないのかね?」
「友人と忘年会の予定くらいはありますよ。それは休暇前ですけど」
「ふむ。正月には実家に帰らないのかね」
――穏やかな声音、優しげな微笑、総じて、確固たる地位にいる壮年の男の余裕。生まれ持った見てくれの良さも相乗効果となり、大概の人間はその風貌にころりと騙されるわけだが。しかしその笑顔の下には、どんな悪巧みが渦巻いているんだか知れない。自分だって、最初の頃は騙されてたよなあ。
「理事長。お言葉ですが、調子に乗ってプライベートなことまで突っ込まないで下さい」
「理事長としてではなく、君の家族として聞いているんだ。正月くらい、実家で家族と水入らずで過ごすべきではないかね。日本史の優秀な講師たる君が、日本古来よりの慣習を踏襲しないのは本末転倒じゃないかい?」
「学校では理事長と一講師という立場を貫くと何百回も申し上げました。それにその理屈は牽強付会も甚だしい、要するに屁理屈です」
「桐嶋くん――」
「御用がそれだけでしたら失礼して宜しいでしょうか、理事長」
「航(わたる)くん、正月くらいおとーさんのところに帰って来て欲しいんだけどなあ」
「理事長は年末年始はタヒチにご旅行の予定と伺ってます。それじゃ、授業の準備があるのでこれで――」
『理事長』の視線を無視して、さっさと踵を返した。最後まで眼を合わせないようにして――。
やれやれ。
溜息をついて、授業用のプリントを束ねる。ステープラーで止めようとして、針を切らしているのに気がついた。あれ、と小さな声をあげると、隣の席から「どうぞー」と針の箱が差し出された。
「あ、ありがとうございます、ボールドウィン先生」
「桐嶋先生は優しいですね。プリントなんて、どの先生もみーんな共有フォルダにファイルを置いて、生徒に自分でプリントアウトして使えって言っているのに」
「ええ、まあ、それでもいいとは思うんですけど……」
ネイティブと全く変わらない綺麗な発音で日本語を操るミスター・ボールドウィンは、英語の講師ではなく古典の講師だ。源氏物語の翻訳を読んで日本の古典に魅了されたという経緯を持つ彼は、学会でも注目されている優秀な源氏物語の研究者、らしい。
彼に限らずこの学校の講師は、みなその分野では一流と呼ばれる研究者ばかりだ。優秀な人材、行き届いた設備、そして選ばれし生徒。――私立朱雀高等学舎は、そういう高校だった。
まだ設立して十年という若い高校だが、その進学実績は目覚しい。にもかかわらずあまり世間に名前がしれていないのは、その実績が国内大学よりむしろ海外大学よりなのと、また一般市民には高額すぎる学費のためだろう。
創立者である先代の教育理念は、『教育に金は惜しむな』だったらしい。一代で莫大な財産を築いた彼は、自分のポケットマネーで私立高校を設立した。東京郊外の広大な敷地をぽんと買い、一流デザイナーに設計させた学舎内には大学並みの設備を整え、ご丁寧に学生寮と講師用のマンションまで揃えた。敷地内はさながら小さな学園都市の様相を呈し、その構造設計の素晴らしさは何度も専門誌の表紙を飾っていることでも証明済みだ。
勿論、『仏作って魂入れず』等という事はなく、箱に相応しい人材を破格の給与で募集した。最高の待遇を約束された高校には、自然と優秀な頭脳が集まった。そしてその噂がセレブと呼ばれる人種の間に広まれば、子供に金だけは惜しまない金持ちたちがまた集まり――。
「ほんっと、金ってあるところにはあるんだよなあ……」
もうすぐここに勤めて一年になろうかというのに、根っから庶民の自分にはまだ雰囲気に馴染めない。講師は必ずしも金持ちという訳ではなく、むしろ金には無頓着な研究肌の人間が多いのだが、それはそれで、そこまで頭脳に自信の無い自分には馴染みきれない。講師にも生徒にもなんとなく隔たり、いや、引け目を感じている自分がいる。どちらにも個性的な人間が多いので、楽しい毎日には違いないのだが――。
「桐嶋先生――」
「ああ、崋山寺」
廊下で呼び止められたのは、二年生の崋山寺要(かざんじかなめ)だった。大学に近い指導形態をとっているこの高校では、部活と同じくらいにサークルやゼミが盛んだ。戦国武将マニアの崋山寺は、自分の主催する古文書解読ゼミに参加している。
「次の授業、うちですよね。プリント持ちますよ」
「ありがとう」
「いいんです、先生の点数稼ぎたいから。あ、先週のゼミの内容サイトにアップしたから、あとで一応確認お願いします。メールもしましたけど」
前半の言葉は敢えてスルーだ。
「ああ、ありがとう。相変わらず仕事早いね」
「ね、先生、クリスマスなんか予定あるんですか?」
……どうも、金持ちというのは屈託が無いというかひねくれてないというか。苦労や挫折を経験してないせいなのか、妙に素直であけすけなところがある。この崋山寺にしたって外交官の父を持つお坊ちゃんなのだが、会った初めから『オレ、ゲイですから』とさっくりカミングアウトして、あからさまにアプローチしてきた。流石に両親には言えてないらしいが、同級生には殆どカミングアウト済みで、皆違和感も無く受け入れているというのだから、十代って恐ろしい。しかも、そういう生徒は彼一人ではない。保健室にはHIV知識啓蒙の小冊子とゴムが常備してあるという噂もあながち嘘ではないのだろう。まさにフリーダムだ。
「オレのクリスマスが崋山寺に関係あるの?」
「友達が、クラブでクリスマスイベントやるんで。一緒に行けたらいいなって」
「ちょっと待て。クラブって、酒と煙草は無しだろうな?」
「煙草なんて吸う奴、今時レアですよ。吸うならもっと気持ちよくなるもんを――」
「ドラッグはもっと駄目だろ!」
「違いますって」
瞬間、掠めるように唇にキスされた。一瞬硬直し、慌てて周囲を見回す――「誰も見てませんよ」と忍び笑いの崋山寺の声。
「好きな人の唇。吸うなら、オレはこれが一番気持ちいいと思いますけど、先生は違いますか?」
「あのなあ、崋山寺……」
「先生に嫌われたくないから、酒も煙草もドラッグもやらないで清いクリスマスを過ごします」
「当たり前だ。オレに言い寄るのも止めてくれ。でないとオレ、手が後ろにまわるじゃないかよ」
「卒業まであと一年か。あーあ、長いなあ」
「何度も言っただろ。何年経っても、オレは君の気持ちに応えられない。オレはゲイじゃないってば」
「うーん、そうかなあ。オレの勘が、先生にはそっちの素質があるって囁くんだけどなあー」
冗談にしても背筋がひやりとする。実はそうだ、なんて言ったら押し倒されかねない。オレには恋人がいる、と素直に言えばいいのかもしれないが、そうしたら絶対に『会わせろ』と言われるに決まってる。それは絶対に出来ない。
だから結局、『オレはノンケだから』と言い張る以外にない。恋人の振りをしてくれそうな女友達がいないこともないのだが、しかし、そんな茶番がばれた日には今度は本物の恋人が嫉妬に怒り狂うだろう。いい年して、変なところで子供っぽいんだから、本当に――。
「で、クリスマスはオレと一緒に過ごしてくれるんですよね? じゃないとオレ、寂しいからハッテンバに行っちゃいますよ」
「友達のクラブイベントはどうなったんだよ」
「あ、そっか。クラブで兄貴相手に腰振ってきます。セックスの無いクリスマスなんてやだし」
「……ゴムだけはつけろよ……」
こんな会話、親にばれたらオレが首を吊りたくなる。本当に、毎日、楽しいよ……。
『疲れた顔してるね、航くん』
「そうですか? ――ウェブカメラだからそう見えるだけですよ、きっと」
『疲れてないなら、今から君のところに押しかけようかな?』
「すいません、ものすごく疲れてるんで今日は無理です」
深夜のスカイプでの会話。自分が一人暮らしを宣言した時、交換条件として約束させられた日課だ。話す時間は互いの都合で変わるけれど、この一年なんだかんだ言って欠かさず続けてきたのは、恋人いわく『愛だろ愛』ってことらしい。
『それは残念だ。もう君に何日触れてないのかな……溜まったものが脳に回って気が狂いそうだよ』
「三日前にヌーヴォ持って来たばかりでしょう。肉ばっかり食べてるから狂牛病になったんじゃないですか。子供じゃないんだから、野菜も魚もバランスよく食べて下さい」
『サプリメントを飲んでるから大丈夫だよ。そういえば、精液も狂牛病のプリオンと同じで主成分がたんぱく質だから、そういうこともありうるかもしれない。さしずめ狂航病ってところかな』
「聡明(としあき)さんの脳ははじめから海綿体で出来てるから、いまさら脳がどろどろに溶けても変わらないですよ」
『それは例え病気になったとしても、変わらずに僕を愛してくれるってことだね。僕は幸せ者だ』
画面の中の恋人――昼間、理事長室で見たイケメン親父は、そろそろ日も変わろうという時刻なのに、まだワイシャツのままだった。さっき帰ってきたばかりなんだろう。何だかんだ言って自分の三倍は働いていると思うが、絶対に自分の前で疲れた素振りは見せない――実際、タフな人だ。話す内容は仕事のことから他愛の無いものまで色々だが、しかしどんな話でも必ず親父ギャグとシモネタ交じりの恥ずかしいラブトークに落ちを持っていくところは、アホ過ぎてすごいと思う。
『――ところで、航くんは年下が好みだったのかい?』
「は? 何ですか、いきなり」
『今日、生徒と廊下でキスしてただろう。相手は確か、二年の崋山寺要だったかな――』
「ちょ!! ま、まさか見てたんですか、聡明さん!?」
後ろめたいことは何もないはずなのに、心臓がぎくりと跳ね上がった。ま、まずい。この展開は――。
『まさか。僕はその頃理事長室で、全国私学連盟の次期総裁選の裏工作に勤しんでいたよ』
さらっと恐ろしいことを言われた気もしたが、そこはこの際どうでもいい。
「じゃあ、……え!? まさか、誰かに見られてたんですか!? それで、その人から――」
『多分誰も見てないと思うよ。崋山寺要はそこまで迂闊な奴じゃないだろ』
「……って、崋山寺のこと知ってるんですか? 聡明さん」
『僕は理事長だよ。自分の学校の生徒のことは全員把握していて当然だろう。大体、毎年面接試験をしてるのは誰だと思ってるんだ?』
「あれは成績が良くても自分の気に入らない奴は入れたくないって、単なる職権濫用の選り好みでしょう?」
『その通り。だから、崋山寺要は僕の色眼鏡に適ったくらいの人間なんだから、隙を見せるなよってことだよ』
最後の忠告が、眼が笑ってないような……。
「う……。そ、それで、何で聡明さんがそのことを……?」
『防犯カメラに映ってたから』
「え? 防犯カメラって、校舎の出入り口にしかないはずじゃ――」
『実際は校舎内のいたるところにある。今は個人情報保護法がどうのと保護者がうるさいから、公表してないけれどね』
「あの……それって下手すると盗撮になるんじゃないですか……?」
『かもね。だが、有事の際には役に立つ。何しろこの学校の生徒は権力と金を持った人間の子息が多いからね。生徒間、あるいは生徒と講師の間に何かがあった時、動かぬ証拠が無いと泥仕合やワンサイドゲームになりかねない。まあ、備えあれば憂いなしってことだよ』
言っていることはもっともかもしれないが……法的にいいのか、それ……?
モニタの中の聡明さんは、『というわけで――』とにっこりと微笑んだ。不吉な予感がした。
『僕は理事長として、生徒と不適切な関係を持った講師にそれなりの処分を下さなければならない。罰として、クリスマスイブの夜からクリスマスは、僕と一緒に過ごしなさい、いいね?』
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「なーにが理事長として、なんだか……思いっきり職権濫用、公私混同の極みじゃないかよ。ったく」
十二月二十四日の午後五時。あのキス事件からひと月近く経ち、学校は数日前から冬期休暇に入っていた。崋山寺はあれからも事あるごとに理由をつけて自分につきまとってきたが、あれ以来隙を見せないように気をつけてきたお陰か、特にこれといったことも起こらず、平穏無事に休暇を迎えられた。聡明さんもクリスマスの約束を取りつけてから機嫌がいい。
『航くんはシーフードが好きだったね。じゃあ、イブの夕食はル・ベルナダンに行こう』
「はあ。ところでそれは東京の店でしょうね?」
『残念ながら日本支店はまだないよ。今のところはニューヨークだけだったと』
「オレ、クリスマスイブは一風堂のラーメンで締めるって決めたんです、今年から! やっぱりラーメンは豚骨ですから!」
『そうか。じゃあ、ベルナダンの後に食べに行こう。ニューヨークにも一風堂はあるから心配無用だよ』
「……(し、知らなかった……!)」
東京にだって美味い店は山ほどあるのに、わざわざ海外に連れ出そうとする聡明さんの魂胆はみえみえだ。つまり、自分を簡単には帰したくないわけで、うっかりついていった日にはそのまま休暇が終わるまで軟禁されるのは目に見えている。何故そう断言できるかと言えば、過去に一度それをやられたからだ。
東京の店じゃなくちゃ行きたくないと突っぱねて、何とか東京の店とホテルを予約してもらうだけで一苦労だった。その店も三ツ星の高級店らしく、実を言えば楽しみよりも粗相をしないかと言う不安の方が大きいのだが――。
その時、テーブルに置いてあった携帯が電話着信の着メロを奏でた。
「――……ん? 誰だろ? 聡明さんの音じゃないし……」
090で始まるので携帯だろうが、覚えの無い番号だった。いぶかしみながら一応出てみると、『桐嶋先生?』と聞き覚えのある声が聞こえてきた。崋山寺要だった。
「え? 崋山寺? なんでオレの番号知ってんだ?」
『それはあとで説明します――ね、先生、今自宅ですか? オレ、今、先生のマンションの下にいるんですよ。ちょっとでいいから、出てきてくれません?』
「何だって?」
ベランダに出て見下ろすと、エントランスの灯りの中にそれらしき人影があった。住所は教員名簿を調べればわかるだろうから不思議じゃないが、何故携帯番号まで?
『せっかくのイブじゃないですか。これから友達と遊びに行くんですけど、その前にちょっとだけ先生に会っておきたかったんですよ。三十分だけ話して下さい。いいでしょう、先生?』
「それはいいけど……」
時計を見る。五時半か――今から三十分話をして、六時。聡明さんは七時に迎えに来ると言っていたから、支度時間を考えても充分間に合う。寒い中立ちんぼさせて風邪でもひいたら可哀相だし、わざわざマンションまで来るところが健気で可愛いとも思った。しょうがないなと苦笑して、コートを着こんで下へ降りて行った。
オートロックのエントランスを出ると、崋山寺が嬉しそうに駆け寄ってきた。外は雪でも降りそうな寒さだ。ホワイトクリスマスになるのだろうか。
「先生、メリクリ♪」
「略すなよ。それにそれは明日だよ」
「それにしても、どうして敷地内の講師用のマンションじゃないんですか? あそこ、家賃激安で最高だって聞きましたけど」
「そんなの、お前みたいのにほいほい押しかけられるのが嫌だからに決まってるだろ」
「冷たいなあ。はい、これ。先生がいつも飲んでる奴。さっき買ったばかりだから、まだあったかいですよ」
崋山寺は手に持ってたスタバの紙袋から、湯気の立っているコーヒーを取り出して渡してきた。ありがたく受け取り、口をつける。
「ありがとう――でも、こんなところで三十分立ち話も辛いし、どっか入らないか?」
「店に入るには半端な時間じゃないですか? どうせなら、先生の部屋に上がらせて欲しいなあ」
「それは却下」
「じゃあ、そこの公園で話しましょう」
マンションの駐車場の傍に、作り付けの小さな公園があった。公園とは言っても砂場と小さな滑り台、あとパンダと象の乗り物が二台ばかりあるだけだが、子供のいる住人には重宝されているのだろう。五時ともなればもう真っ暗で、公園に人影は無い。動物の乗り物に向かい合って腰掛けて、話し始めた。
「先生、私服GAP派ですね。似合ってますよ」
「そうかな、ありがとう。たいていGAPかユニクロだよ。安いし」
「えー、オレもユニクロ大好きですよ? このカットソーもユニクロ」
「へえ。――で、お前今から例のクラブイベントってのに行くのか?」
「それはもっと遅くなってから。その前に、友達んちでパーティ」
「……家に帰らないのか? 家族でパーティとかは……」
「やりますよ、明日の夜。久し振りに親父に会うし」
他愛も無い話をしているうちに、不思議と眠気に襲われ始めた。おかしいなあと思いつつ、眠気を醒まそうとコーヒーを一気に全部飲んだが、眼が覚めるどころかかえって眠気が増した。
一服盛られたことに気がついた時にはもう遅かった。意識を失う直前、倒れかけた躯を崋山寺が抱きとめてくれたことは覚えている。
……。
『ここを出て行きたい? ――どうしてそんなことを……航くん』
一年と少し前。オレの突然の申し出に、聡明さんはネクタイを解く手を止めた。その日の帰宅も例によって午前様。互いにくたくたに疲れていたが、オレは、どうしても聞いて欲しいことがあるんですと言って、聡明さんの個室に押しかけた。
その頃、オレは聡明さんの秘書として一緒に働き、聡明さんのマンションで一緒に暮らしていた。ワンフロアぶち抜きの賃貸で、一ヶ月の家賃が何百万もするような超高級デザイナーズマンション。もっとも、そのビルは聡明さんのものだから家賃はただらしいけれど。先代、つまり聡明さんの父親が暮らしている豪邸も都内の一等地に別にある。聡明さんはつまり、成り上がりの資産家の二代目、御曹司とか若社長とか呼ばれる、そういう立場の人だった。
『あの、……こう言ってしまうと誤解されるかもしれないけれど、ここには、オレの居場所が無いんです』
『……君の居場所は、僕の隣だろう? 僕は、君に僕の跡を継いで欲しいと、僕の財産をすべて君に渡したいと思っている。だから、僕の仕事を覚えてもらおうと思って秘書にしたんだ。……仕事がきついのなら、しばらく休んでも――……』
『…………』
『……。何か、言いたいことがあるんだね。わかった。口を挟まないから、全部遠慮なく言ってくれ』
聡明さんに促されて、隣り合ってベッドに腰掛ける。でっかいキングサイズのベッド。誰かと一緒ならいいけれど、一人じゃ広すぎて不安になる大きさ――だけど、きっと聡明さんはそんなこと思いもつかないんだろう。
『……オレ、聡明さんのこと、大好きだし、尊敬してるし、感謝してます。施設にいたオレの事捜して見つけてくれて、大学にも行かせてくれて、養子にまでしてくれて……』
オレは父親の顔を知らない。母親はいたけれどオレの事を完全にネグレクトして、物心つく頃に蒸発してしまった。施設は決して悪いところじゃなかったけれど、良い思い出は無い。早く出たくて堪らなかった。そして高校を卒業しようという頃に、突然、聡明さんが眼の前に現れたんだ。
聡明さんは、オレは友人の忘れ形見だと――友人の遺言で、オレの事を友人の代わりに世話するんだと言った。……これはずいぶん後で知ったことだが、ゲイの聡明さんは、オレの父親に片思いしていたらしい。多分、オレに父親の俤を見ていたんだろう。
大学に行って勉強したいと言うと、聡明さんは浪人も留年も許さないよと笑って、快く行かせてくれた。オレは一生懸命勉強した。それが恩返しになると思っていたし、実際聡明さんは喜んでくれた。
その頃は本当に、父親と息子のような関係だった。聡明さんは仕事が忙しくて殆ど家に居なかったし、オレも大学に入りびたりで家に居なかった。けれど、顔を合わせれば笑いあって色んな話をした。オレはただ、聡明さんを大人の男、恩人として敬愛していた。――その関係を壊したのは、聡明さんだった。
『オレは……聡明さんが好きで、感謝しているオレは、聡明さんと一緒にいることを望んでいるんです。今、二十四時間、仕事でも家でもずっと大好きな聡明さんと一緒に居られるの、とても幸せだと思うんです。……でも、オレの中に、息が詰まりそうになっているオレも、いるんです。……それに、気付いたんです』
『……聞いているよ。続けて』
『聡明さん。オレ、あなたのこと大好きです。でも、あなたに施設から救い出されて、あなたの家に暮らさせてもらって、あなたの援助で大学に行かせてもらって、あなたに愛を教えてもらって、あなたの秘書となってあなたに仕事を教えてもらって、あなたの財産を継がせてもらう。――オレは、一体、なんなんですか……?』
大学二年、二十歳を過ぎた頃から、訳もわからず聡明さんの視線が辛くなってきた。それは聡明さんがオレの事を恋愛対象として見るようになったからだと知ったのは、その年のクリスマスに聡明さんに告白された時だった。
――正直、引いた。受け入れられなかった。軽蔑したし、顔も見たくないと思った。けれど、聡明さんは忍耐強くオレの気持ちが変わるのを待ってくれた。聡明さんの想いを受け入れたのは、それから二年後、大学を卒業する時だった。
婚姻届の代わりにと、聡明さんはオレと正式に養子縁組した。そして卒業後、オレは聡明さんの望み通りに秘書となって、聡明さんと一緒に仕事を始めた……。
『オレは――オレは、あなたのペットじゃない……。あなたの腕の中で愛されていると感じるのは、耐えられないんです。あなたの愛情と期待に応えることは、今でもオレの喜びです。それは本当なんです。あなたを好きだから、あなたの傍に居たいと思うのも本当です。だけど、オレは、オレとして、一人の人間として、あなたを愛したいし、愛されたい』
『……』
『広すぎるんです、大きすぎるんです、あなたも、この家も会社も、何もかも。オレは、あなたに愛されて傍に居れば居るほど、オレ自身を見失っていく気がするんです。――お願いです、聡明さん。オレを手放して下さい。一人にさせて下さい。いつか、あなたと対等に愛し合える存在になれたと思ったら、自分があなたの想いにあたう人間だと思えるようになったら、必ずあなたの元に帰ってきます』
『……君の言っていることは、理解できる。だけど、僕は君を離したくない』
『聡明さん――』
『いつか、っていう言葉を僕は信じていないんだ。いつかまた会えるとか、いつか気持ちが通じるとか……そんなことを思っているうちに、絶対に手の届かないところに行かれてしまったら、どうすればいい? どんなに後悔しても、もう遅い。航くん。君が僕と離れているうちに、もし事故で死んでしまったりしたら、僕は君を手放した自分を呪い殺すだろうね』
『聡明さん、オレは――……』
『どうして、愛することに対等だとか価値があるとか、そんなことを考える必要がある? めぐり合えて同じ時間を過ごせて愛し合える、それだけが大切なことなんじゃないのか? 好きだよ、航くん。自分でも呆れるほどに君を愛している。息子だって友人の忘れ形見だってそんなこと、どうだっていい。一秒でも長く傍に居たい。僕たちに許された時間は、決して無限じゃないのに――……』
あんなに哀しそうな眼の聡明さんを見たのは、初めてのことだった。オレは、聡明さんと自分はどっちのほうが身勝手で残酷なことを言ってるんだろうと考えた。答えは、どっちもどっちだった。
オレは、その一週間後に聡明さんの家を出た。聡明さんは、オレの引越しを手伝ってくれた。
……誰かが、オレの躯にキスしてる。ああ、そっか。聡明さんだ。
一年前の夢を見ていた。そのあと、夢はもっと昔に戻って、初めて聡明さんと肌を重ねた夜の夢を見ていた。
あの時、オレは気持ちが悪くなって吐いてしまいそうなほど、躯が拒絶反応を示した。聡明さんはオレの気持ちを思いやって、最初は裸で抱き合うだけにしてくれた。これもセックスには代わり無いよと笑ってくれた、そんな聡明さんの優しさが嬉しくて、なのに受け入れられない自分が情けなくて、初めて聡明さんの腕の中で泣いた。聡明さんと躯を繋げるようになれたのは、それから半年後だった。
本音を言えば、今年のクリスマスは、最初から聡明さんとずっと一緒に過ごすつもりだったんだ。聡明さんはイベントが大好きだし、オレが一人暮らしを始めてから、寂しい思いをさせてしまっているから。クリスマスくらい、べたべたさせてあげたい……いや、違うか。オレが、べたべたしたいんだ。
だけど、職場で理事長として訊かれたら、講師としてああ答えるに決まってる。どうも聡明さんは、公私混同しがちで困る。もう四十七歳のいい大人なのに、寂しがり屋で、やきもち焼きで、我儘で派手好きで、まっすぐにオレを見て、誰よりも愛してるって口説いてくるから、本当に、困るんだ――……。
それにしても、オレ、いつのまに聡明さんと食事に行ったのかな?
確か、崋山寺がオレのところに来て、外で話してて、……あれ……?
そのあとの記憶が……? あれ……ここ、どこ……?
その時、がつんと頭を殴られたように気付いた。
キスしてるのは、聡明さんじゃない。だって、聡明さんのキスなら、もっと髭がざらざらあたるはずだ――。
「だ、れ……!?」
「先生、眼が覚めた?」
まだぼやける視界に入ってきたのは、低く狭い天井――自分が寝ているのが車のリアシートだと気付くのに時間はかからなかった。ひょいとオレを覗き込んだのは、崋山寺だった。
「か、ざんじ……!? おま、一体、何して!」
「いやー、マイスリーって結構きくんですね、知らなかった」
「そんなこと聞いてない! ちょ! この手、解けよ…!」
「駄目ですよ、解いたら逃げるでしょう。叫んでもいいですよ、どうせ誰にも聞こえないから」
「お前! 自分が何してんのかわかってるのか……!?」
オレの両手は後ろ手に縛られて、恐ろしいことに下半身は脱がされて何もつけてなかった。シャツもボタンを外されて、肌蹴られている。崋山寺は冷酷な笑みを浮かべて、オレに跨っている。その手には携帯が握られていた。ざあっと一気に血の気が引いた。
「崋山寺! 今ならまだ、何も無かったことにしてやるから、だからやめろよ、オレの手を解け!」
「何も無かったことにする? まだご自分の立場がわかってないんですか、桐嶋先生? やばいのは、オレじゃなくて先生のほうですよ?」
携帯のシャッター音――「顔もアレもばっちり映ってますよ」と崋山寺の声。ちくしょー、小中学生だけじゃなくて高校生にも携帯持たせんの禁止にするべきだ! オレは今、心の底から橋○知事を支持するぞ!!
「お前――オレを脅迫して、何がしたいんだよ……!」
落ち着け、冷静になれと必死に自分に言い聞かせる。崋山寺の狙いは一体何なんだ?
「何がって……とりあえず、セックス?」
こんの、脳細胞まで海綿体のヤリチンがあああああああああ!!!!!!!
「だって、先生が悪いんですよ、オレがこんなに口説いてるのに靡いてくれないから。こう言っちゃなんですけど、オレ、結構もてるほうなんですよ? オレから言い寄って、落ちなかった人間なんていないのに」
「だから、オレはノンケだと何回言えばわかるんだよ! お前が女に興味が無いのと同じで、オレは男に興味が無いんだって――」
「じゃ、先生の携帯の、毎日『愛してるよ航くん』ってメールくれる「としあきさん」って誰ですか?」
うわあああああああああああああ(爆)!!!!!!
「そ、それは、……っっ」
「どう読んでも女の文章じゃないですし、先生、それに『オレもです』とかレスしてるのは、これはどう説明を?」
だらだらと嫌な汗が噴き出してきた。ばれた――がしかし、相手が誰かまではわかってないのが救いだ。オレは学校では旧姓の「桐嶋」を名乗ってるし、流石の崋山寺も理事長の名前までは覚えてない。仮に覚えていたとしても、理事長とメールの「としあきさん」を結びつけるのはまず不可能だろうが。
「そ――その前に、なんでお前がオレの携帯番号知ってたんだよ? それを先に教えるのが筋だろ」
話しながら、オレは必死で手を動かしていた。手錠じゃなかったのが幸い、しっかり結んではあるが、素人の縛り方ならきっと縄を解く隙があるはずだ。縄抜けしようとしていることを崋山寺に悟られないよう、時間稼ぎに話続ける。
「ああ、それは簡単ですよ。先生が授業している最中に、職員室にある先生の携帯をこっそり見たんです。自分の番号見る操作って大概同じだし」
「お前、恐ろしいことをさらっと言うな!」
「番号教えてって言っても教えてくれないからですよ。で、先生。やっぱり、オレの同類でしたね? 嬉しいなあ」
言いながら、崋山寺の手がオレの下半身を弄ってきた。慌てて身を捩るが、狭い座席の上じゃ逃げ場も無い。せ、生徒にレイプされるなんて最悪だ!
「待てよ、崋山寺――一体、何があったんだ? 急にこんな行動に出るなんて、お前らしくもない」
いちかばちかの賭けで言ってみた言葉に、崋山寺の動きが止まった。
「何かあったんなら、オレでよければ相談に乗るから。こんなレイプまがいのことしたって、それで問題が解決するわけじゃないだろ……!」
動かしているうちに縄が僅かに緩んで、結び目に手が届いた。何とか解けそうだ。
「……解決、するかもしれませんよ。先生、オレの恋人になって下さいよ。でないと、さっき撮った写真、世間にばら撒きますよ」
「崋山寺――」
「先生、ウザいっすよ。解決なんてどうでもいい、どうせ無理なんですから。イブに暗い気持ちでいるのなんて最悪だし、とりあえず、やなこと忘れて気持ちよくなりたいんですよ。ケーサツ行きたきゃ行って下さい、訴えてもいいですよ、同性の生徒にレイプされたって言えるもんならね」
崋山寺の表情と言葉は、かつて見たことが無いほど荒んでいた。学校で見せる、気取り屋でこまっしゃくれているけれど憎めない、そんな崋山寺はここにはいなかった。
「でもね、きっとうちの親は優秀な弁護士雇いますよ。もし先生の主張が認められても、示談金払って和解です。オレは未成年だし、顔も名前も出ない。それで終わり、ですよ。先生、表に出ないことって、無かったことになるんですよね。嘘もつき通せば真になるって言うじゃないですか。世の中で言っている真実って、結局その程度のものでしょう? 先生だって、オレに嘘ついてたでしょう。オレ、先生のことは信じてたのな……見事に、裏切られましたよ」
「……」
「先生だってゲイなのに、どうしてオレを拒むんですか? ……そんなに、オレのこと嫌いなんですか? 先生も、オレのことキモイって思ってるんですか? でも、自分が教師で相手が生徒だから、そうは言えなかった? この期に及んで、もう嘘をつく必要なんてない――正直に言えばいいじゃないですか……!」
――その時、縄が解けて手が抜けた。オレはがばっと起き上がり、オレに跨ってた崋山寺に頭突きを喰らわせ、さらにその勢いを借りて自由になった手で崋山寺に平手を一発ぶちかました。人生初の平手は、ばちんと綺麗な音をたてて決まった。
「表に出ないことは無かったことになるなんて、本気で思ってんのか、崋山寺。それでも歴史好きかよ、オレはお前にそんなことを教えた覚えはない」
崋山寺は、殴られた頬を押さえて俯いていた。――きっとこいつ、生まれてこのかた殴られたことなんてないんだろうな。
「それが嫌だったんだろ。それじゃもう、納得できなかったんだろ。表には出てこない真実の姿を知りたいと思って、それを求めてお前、オレのゼミで古文書勉強してるんだろ。ちゃんと一次資料から戦国武将の生の姿を知りたいって、お前は最初にそう言ってたじゃないか――表に出なかったことは無かったことになるなんて、そんな想像力の無いことを言うなら、お前もう歴史なんて勉強するなよ!」
「……」
「……オレが嘘をついていたのは悪かったよ、謝る。だけど、本当のことを言えば、お前はきっとオレの恋人のことを知りたがると思った。それは困るんだ、相手にも社会的立場ってものがあるから……。詭弁に聞こえても仕方が無いけれど、オレはお前を騙したかったんじゃなくて、恋人を守りたかったんだ」
崋山寺は顔を上げたが、オレに視線を合わせない。はん、と嘲るように喉の奥だけで笑うのが聞こえた。
「……ものは言いようですね。嘘に変わりはないのに、正当化ですか」
「……そういうふうに考えてた時期が、オレにもあったよ。自分も含めて、この世界の何もかもが嘘だらけで醜く見えてた時があった」
オレは一生懸命言葉を探していた。その意味を理解するのはずっと先でもいいけれど、今ここで、オレが崋山寺に伝えなくちゃいけないことは、なんだろう――。
「あのさ、崋山寺。嘘はいけないことだってみんなわかってて、それでも嘘をつくのは、それは何かを守ろうとしてなんだよ。それがなんなのかは人によって違うし、時と場合によってはそれが犯罪になることもある。嘘をつくのがいいことだと言ってるんじゃない。でも、嘘をついて一体何を守ろうとしたのか、お前にはそれをちゃんと見極められる人間になって欲しい、と、思う……」
崋山寺は眼を合わせない。でも、オレは崋山寺の顔を真っ直ぐに見て話した。――これは聡明さんの話し方だな、と頭の片隅で思っていた。
「お前が両親に自分がゲイだって隠してるのは、それは、お前が自分と両親を守りたいからだと思う。オレは両親に対してそういう葛藤を抱く必要はなかったけど、親に嘘をつくのは辛いだろうな。だけど本当のことを言って、親に自分を否定されるのも辛いだろうな。でも、嘘をつくのが嫌だって、本当のことを伝えたいっていう、そういう決意は、オレは嘘をつくことよりもずっと価値があると思うよ」
崋山寺がやっとオレを見た。思いっきり平手した頬が赤く染まっているのが、なんだか妙に可愛く見えた。まだ十七だもんな。オレは思わず微笑んで、更に続けた。
「……でも、本当のことを言うのって、ものすごく痛いし苦しいな。嘘で守りたいと思っていたものを、逆に傷つけることになったりして、それで本当によかったのかどうか判らなくなることも多い」
「……そういう時は、その先どうすればいいんですか?」
崋山寺が口を開いた。その顔はもう、見慣れたいつもの崋山寺の顔に戻っていた。
「オレは笑うことにした」
「は?」
「だって、言っちゃったものは仕方ないし、それで良かったのかどうかは分からないし。だったら、開き直って笑うしかないだろ。オレが笑えなかったら、相手も笑えねー」
「……」
「――と、オレは傷つけた相手に言われたんだよ。笑ってくれ、って。でなければ僕は君の決意を応援できない、って……」
オレは崋山寺の頭を撫でて、にっこりと笑った。
「――崋山寺。嘘をついていて、お前を傷つけて、ごめんな。でもオレは、オレにそう言ってくれた、オレの大好きなあの人を守りたいんだ。それだけだよ。お前は、生意気で将来有望な可愛い教え子、それ以上でもそれ以下でもない――」
すごくいいシーンだと思うんだが……どんなにカッコいいこと言っても、オレ、まだフルチンなんだよな。いい加減、服着させてくれ……。
『航くん? 無事なのか? 一体、何があった?』
崋山寺から返してもらった携帯の電源を入れると、聡明さんからの着信とメールが大量に来ていた。時計を見ると既に八時過ぎ。慌てて聡明さんに電話すると、ワンコール鳴る前に心配そうな声が聞こえてきた。オレは聡明さんに申し訳なくて、咳き込むように謝った。
「あの、心配かけて本当にごめんなさい! 何があったかは長くなるので帰ってから説明します、でも事件性は皆無でオレはピンピンしてるので安心して下さい。今から急いで帰りますから、もうちょっと待ってて下さい!」
『今何処に居るんだ? すぐにそっちに迎えに――』
「あ、いえ、大丈夫です帰れます。今居るのが――(通話口を塞いで)ここ、何処? 崋山寺」
「逗子。葉山」
「なんだって!? お前、なんでそんな遠くまで来てんだよ! 帰るのに余裕で一時間以上かかるじゃないか!」
「だって来てみたかったから」
「しかもお前、無免許だろ! あーもう、帰りはオレが運転するからな! あの、ごめんなさい聡明さん、とりあえずオレの部屋で待ってて下さい! 今葉山で、これから車で帰りますから」
『――わかった。事情は帰って来てから聞くよ。ただ、急がなくていい。ちゃんと待っているから、気をつけて安全運転で帰って来るんだよ、いいね』
「はい……」
そんなわけで、帰りはオレが崋山寺の車を運転して帰った。新車のプリウスは、崋山寺が家から無断拝借してきたものらしい。
走り出して暫くして、崋山寺が「来る時は、なんか最低のイブだなって思ってたんですけど――」と切り出した。
「こうして先生と夜のドライブ出来て、これはこれでいいイブの思い出って気がしてきました、オレ」
「抜かせ。オレはこの後、帰ってからが地獄だよ」
「じゃ、帰るのやめて、このままオレとラブホに泊まりませんか。先生とセックスしたいし、家には帰りたくないし」
「駄目。オレにもお前にも、帰ってくるのを待ってる人がいるんだから」
「……先生の恋人、『としあきさん』って、見てみたいなあ。どんな人なんだろ」
……お前、見たこと何回もあるんだけどな。とは言えずに、あははははと笑って誤魔化した。
ラジオからはクリスマスソングが流れて、車内にはあたたかく明るい空気が満ちていた。オレと崋山寺は、下らないことを話して、笑いあった。崋山寺に何があったのかは、最後まで聞かなかったし、崋山寺も話さなかった。だが何となく察してはいたし、そして、崋山寺はちゃんとそれに立ち向かうだろうということもわかっていた。崋山寺の家に着いて別れる時、崋山寺は笑顔で家の中に消えていったから。
崋山寺を送り届けてから、オレはタクシーを拾ってマンションへ急いだ。
エントランスにつけてもらい、タクシーから降りた時。柱の陰から、「航くん――」と聞き慣れた声が耳に響いた。
「……!」
誰か、なんて確認しなくてもわかっていた。オレは、その声の主の腕の中へ飛び込んだ。しっかりと抱きとめてくれる広い胸――かすかに、甘い香水の匂い。
「聡明さん――部屋で待ってるとばっかり……!」
「一秒でも早く、君に逢いたかったから」
手を伸ばして頬に触れると、冷たかった。「いつからここに?」と聞くと、「さっき君がタクシーに乗って電話をくれてからだから、ほんの十五分くらいだよ」と笑った。こんな凍えそうな夜、十五分どころか五分でも辛いだろうに――。
オレは思わず、その冷えた頬に唇を寄せた。いつも人目を憚るのはオレのほうだけど、今はそんなことどうでもいいと思った。頬を擦りあわせた後、聡明さんの唇がオレの唇に重なった。
聡明さんは、こんな状況だっていつも通り余裕に満ちて、優しい笑顔を浮かべていた。そう――その時は、そう見えたんだ。
「――中へ入ろう。時間が勿体無いからね。話は、続きをしながら聞かせてもらうよ」
■
「んっ……、そ、それで…、眼が覚めたら、車の中で――……っ」
「崋山寺は免許ないだろうに、ほとほと悪ガキだな。まあ、僕も人のこと言えた義理じゃないけど――で? 車の中で、何をされたんだ? もしかして、こんなことされたのかい?」
……そんなことになりそうな予感はしてたけど、玄関に入るなりディープキスされて押し倒されて、あっというまに下着ごとジーンズを剥ぎ取られて。コートも脱がないまま、玄関の硬いフローリングの上で聡明さんの甘い責め苦に喘いでいるオレがいた。
「ひぁっ! さ、されてないっ……、と、聡明さん、やめ、せめて風呂入ってから――……っ」
腿を大きく割り広げられて、露になった蕾の襞を聡明さんの舌がなぞるように舐める。唾液を送り込むようにねじ込まれ、ねちゃねちゃと卑猥な水音がするたびにそこは感度を増し、聡明さんのためだけの性器へと変えられていく。
「じゃあ、このキスマークはどういうことだい? ほら、そこにもここにも、体中についてる――」
「それは……眼が覚める前に、つけられて、ぅんっ……だけど、それ以上のことは、何も……」
「それ以上のことがなかったって、どうして断言できるんだ、航くん? だって君は意識が無かったんだろう? 崋山寺は手が早いからね――こんなこと、されたんじゃないのかい?」
「はっ……ぁ、やあ!」
亀頭をわざとじゅぱじゅぱと音を立てて啜られて、それだけでオレはあっけなく達してしまった。聡明さんがごくりと喉を鳴らしてオレの白濁を飲み下し、顔を上げる。オレは恥ずかしさにかあっと顔が火照るのがわかった。聡明さんもそうだけど、オレだって一ヶ月振りで溜まってるんだ。ディープキスされただけでもう、下着を濡らしてしまってた。恥ずかしさに身を捩ろうとすると、聡明さんに腕を取られて床に縫い付けられた。
「んっ…! 聡明、さん……っ」
蕾に滑る先端があてがわれた感覚――と、オレの内奥まで一気に熱く滾る雄棒が突き刺さる。狭い蕾を押し広げてぎちぎちに腹腔を満たす質量に、快感よりも痛みと息苦しさを覚えて、聡明さんの首に縋り付いた。
もう数え切れないくらい聡明さんと愛し合って来たけれど、前戯もほとんど無い、こんな即物的な情事は初めてだった。どれほど飢えている時でも、聡明さんの愛し方には余裕が、オレの躯を思いやる優しさがあった。いつもなら、決してこんな風に性急に挿入してこない。時間をかけて解して、ローションをたっぷり使って、オレが痛みを感じないようにしてくれるのに――。
多分、聡明さんは怒っているんだ――当然だよな。隙を見せるなと言われていたのに、あんな手に簡単にひっかかって、折角のイブの予定を台無しにしてしまった。聡明さんは色々計画を立てて、楽しみにしてくれてたのに。こんな形で約束を反故にしたことがなかったから、聡明さんが怒ってるのにもすぐには気付かなかった……そんな自分の鈍さも恨めしい。完全に、オレが悪い――。
「聡明さ……」
呼びかけた名は、聡明さんの唇に奪われた。舌を絡ませられ、聡明さんの唾液が流れ込んでくる。オレは、同じように舌を絡ませて、聡明さんに応えようとした。腹に力を入れて、オレの中の聡明さんを締め付ける。聡明さんに抱かれて嬉しいってことが、躯を通して伝わるようにと願って。
貪るような激しいキスが繰り返され、息が苦しくなってきた時、ようやく唇が離れた。うっすら眼を開けると、吐息が触れるほど間近で聡明さんの顔がオレを見つめていた。その表情は、自嘲気味な微笑を浮かべていた。
「君の言葉を信じてるよ。……だけど、情けないことに僕は三十も年下の崋山寺に嫉妬してる。そんな自分に嫌気がさすが、真実だ」
「聡明さん……」
「君はそれ以上のことは無かったと言う。でも、未遂も何も、君の躯に崋山寺の愛した痕が残ってる、それだけで僕はもう気が狂いそうだ。手首には縛られてた痕まである。そして、そんなことをしておきながら、それでも君に庇われる崋山寺に嫉妬してる……この気持ちの持って行き場がない」
「うっ…く、ぁっ……」
聡明さんが腰を揺らすと、敏感な内壁を抉られるように擦れあう。いつもなら感じてしまうのに、今は殆ど感じられない。コート越しとはいえ硬いフローリングに押し付けられた背中が擦れて、そっちの痛みの方が強く感じてしまう。それでも耐えていると、聡明さんが腰を引いた。――オレの中から、聡明さんが出て行く……。
「――レイプしてるのは、崋山寺ではなくて僕だね……」
「そんなこと――」
「苦しそうな顔してる。どんな理由があっても、君を苦しめるのは僕の本意じゃない……済まない」
苦しくなんかない、苦しんでるのはオレじゃなくてあなただ――。聡明さんがスラックスのジップを上げて、躯を起こす。――嫌だ。こんなふうに離れるのは、嫌だ。オレは身を起こし、聡明さんに抱きついた。
「航く――…」
聡明さんの唇を奪う。さっき聡明さんがしてくれた、それ以上に貪欲なキス。キスの仕方、舌の絡ませ方とか何もかも、教えてくれたのは聡明さんだ。聡明さん以外の誰にも、オレはキスしたいとは思わない。キスしながら、残っていた着衣を手早く全部脱ぎ捨てた。一糸纏わぬ姿になって唇を離したとき、二人の間に透明な橋がかかった。
聡明さんの頬を撫でる。顎周りのざらざらした髭の感触――オレの大好きな、聡明さんの肌。
「聡明さん……眼が覚めて、崋山寺に縛られてレイプされそうになっている時、オレの脳裏には一瞬、あの嫌な記憶が甦りました」
『あの記憶』という言葉に、聡明さんの顔が曇った。オレを抱き締める腕に力がこもる。
「でも、それは本当に一瞬のことでした。それでパニック障害を起こすこともなく、オレはすぐに眼の前の状況を冷静に見ることが出来たんです。手首を縛ってた縄から縄抜けするなんて、あの頃のオレには絶対に出来なかったでしょうね」
「縄抜け? 君が?」
「ええ。自分で解いて、それで崋山寺を殴りました」
「――……それは、見てみたかったな」
聡明さんがくすりと笑った。つられてオレも笑顔になった。
「オレは、あの頃よりもずっとずっと、精神的に強くなれました。それは間違いなくあなたのおかげなんです、聡明さん。あなたはオレに、陵辱ではなく愛欲としてのセックスを教えてくれた。オレはもう、昔みたいにセックスを恐れたり、汚らわしいと潔癖になったりすることもない。それが愛情の一つの方法に過ぎないって知ってるから。性欲塗れの馬鹿な高校生が迫ってきたら、股間を蹴って撃退できます」
聡明さんの手が、話を促すようにオレの躯を優しく撫でてくれている。気持ちよくて、うっとりする。エアコンの暖気が玄関まで来ているから、寒さを感じることはない。むしろ、聡明さんの愛撫にだんだん躯が火照ってきている。相変わらず、なんてエロい手つきをする人なんだ……やばい。どんどん感じてきている。
「……オレが愛してるのは……愛されたいと思うのは、一人だけです……。嫉妬も、嬉しい……全部、オレにぶつけて下さい――……」
話しながら、互いについばむようなキスを繰り返す。服越しにも、聡明さんの雄がまた猛ってきているのがわかった。服の上から撫で、ジップを下ろして露にする。オレは躯を沈めて、聡明さんの分身に舌を這わせた。浮き出てる血管をなぞって丁寧に、執拗に幾度も嘗めあげ、唾液を絡ませて先端をしゃぶる。意識しなくても、くちゅくちゅと音がたってしまう。
「ふぅっ……ん――」
自分からフェラするなんてことも、昔のオレには考えられないことだった。昔――施設に居て、そこの園長に性的虐待を受けていた頃には。
園長はショタコンの変態ホモ親父だったんだろう。オレは施設に入ってからずっと、園長の肉便器にされてきた。今思えば、さっさと警察に言うなりして、そんなところから逃げ出せばよかったんだ。だけど当時のオレにはそんなことは思いもつかなかった。園長に、誰かに言ったらお前もお終いだ的な脅迫を受けていたせいもある。オレは逃げることも誰かに助けを求めることも出来ずに、その虐待を受け続けなければならなかった。
オレが成長するにつれ虐待は減って行き(やっぱりショタコンだったんだろう)、高校に入る頃には完全になくなった。けれどオレの中には当然、性に対する強烈な恐怖と拒絶が植えつけられた。母親のせいで女を信じることもできず、誰も信じることが出来ずに暗い十代を過ごし――そうして、そこに現れたのが聡明さんだったんだ……。
「ああっ……聡明さん……」
聡明さんの欲情にたっぷりと俺の唾液を絡ませた後、オレは自分からその上に腰を下した。滑る雄棒は、今度はなめらかにオレの中に飲み込まれていった。聡明さんが眼を細める。気持ち善がってくれているのは、オレの中の聡明さんがどくんと脈を打って質量をさらに増したことでわかった。
「ん、あん、っあ…」
聡明さんと騎乗位で繋がり、自分から腰を振る。聡明さんの手にオレの分身を弄くられて、前と後ろからこみあげる快感に背中が反り、視界が涙で滲んだ。
「そんな程度じゃ僕はイケないよ、航くん――」
「や……!」
聡明さんに腕と腰を掴まれたかと思うと、あっという間に押し倒された。と思う間も無く、激しく腰を打ち付けられて、あられもない嬌声が喉から溢れ出る。
「ああ! やあ、あっ、あん、激し…いっ、あぁん!」
聡明さんが熱い楔を奥まで打ち込むたびに、肉がぶつかる音と、繋がった部分から粘膜が擦れ合う水音がぐちゅぐちゅと漏れる。そんな淫らな音と自分の濡れた喘ぎ声に、更に感じてしまう自分がいる。
「全部、君にぶつけたら――君を壊してしまうかもしれないよ? 僕は、君が思っているよりずっと嫉妬深いんだ、本当はね……」
「……大丈夫、です……そんなこと、知ってます……」
オレは、知ってる。聡明さんが、誰よりもオレを愛してくれて、どんな時でもオレのことを考えてくれてるってこと。
例えば、今オレを押し倒すんだって、ちゃんと服が重なったところに寝かせて、オレが痛くないように気を遣ってくれてる。それにどんな時でも、オレが嫌いな後背位は絶対にしない。オレが虐待されてた頃、ずっとそれでされてたことを知ってるから。
ひとつひとつはささいなことかもしれないけど、それをいっぱいくれる聡明さんのこと、オレは本当に好きなんだ。エロ親父なとこも、笑えない親父ギャグも、子供みたいに見栄っ張りで嫉妬深いところも、みんな大好きなんだ――。
「オレは、強くなったって、言ったでしょう……? あなたの嫉妬くらい、全部受け止められます……そんなに簡単に、壊れたりしませんよ……疑うなら、どうぞ試してみて下さい」
「……言ったね?」
乱れた髪越しに見える聡明さんの眼に、猛々しい野性の雄が見えた。一呼吸置いて、その腰がさらに淫靡で艶かしく動き、オレの中をぐちゃぐちゃに掻きまわし、あらゆる角度から攻め立て始めた。
「ひっ、――あああっ……としあき、さんっ……ぁ!」
強すぎる快感に、頭の中が真っ白になる。聡明さんによく躾けられた後孔は、どこを攻め立てられても感じまくって、攻め立てられるたびに揺れるオレの亀頭から、ぼたぼたと蜜が溢れ落ちた。
「だ――め、もうっ……ああっ、ぁっ……!」
最奥の感じるところを執拗に擦られて、堪えきれずにまた達してしまった。快感に溺れたオレの躯が、人形のようにびくびくと痙攣して、弛緩する。躯の内にどくどくと注がれる、聡明さんの熱い愛液。その脈にすら、感じてしまう――。
「――残念ながら、まだ僕の分身は全然満足してないみたいだよ、航くん」
確かに、オレの中の聡明さんの分身は全然萎えてなかった。聡明さんはオレの手首の縛られた痕に口づけると、にっこりと笑って恐ろしいことを言った。
「もう一度愛し合って、君の中を僕でいっぱいにしよう。その後、風呂に入って、君の躯を中も外も綺麗に洗ってあげる。それから一緒に夕飯を食べて、ベッドで本番だ――今夜は寝かせないから、覚悟するんだよ」
……オレ、もしかしなくても墓穴掘った、な……。
覚悟はしてたけど、その後やっぱり風呂の中でも一回手でイかされて。本気を出した絶倫のエロ親父ほど恐ろしいものはない。
「わ……」
風呂から上がってリビングに入って、オレは思わず驚嘆の声をあげた。この部屋を出る時にはクリスマスグッズひとつ無かった部屋が、クリスマス仕様に変わってた。
ソファの傍に、柔らかな光を放つ間接照明。部屋のあちこちに配置されたポインセチアとキャンドル。テーブルの上には、デリバリーのクリスマスディナーとワインが整えられていた。
「すごい。どうしたんですか、これ!?」
「君が葉山から電話をくれた後に、急いで整えさせた。僕の仕事を知ってるだろう?」
「イベントプラン会社の社長、でしたね。それで、風呂に入る前にリビングに入るの止めたんですね?」
後ろから抱き締めてきた聡明さんに微笑みかける。聡明さんは、先代から受け継いだ事業のほかに自分でも会社を興して成功している。センスが良くてイベント大好きな聡明さんには天職なんだろう。
「でも、予約してたレストランとホテルは……」
「あれは秘書の宮田に彼女と行かせた。彼女に見直されたって感謝されたよ」
「無駄にはならなかったんですね、良かった――」
食事をあたためて、二人でソファで乾杯した。キャンドルの光が揺れる暖かい部屋で、バスローブ姿で寄り添って、美味しいワインを二人で傾ける、そんなクリスマスイブ――。
「最高です。オレ、店とホテルよりこっちの方が嬉しいかもしんない」
「じゃあ、災い転じて福と為す、ってことかな。崋山寺に感謝するのは悔しいが」
「オレは感謝してますよ。だって――」
あなたを愛していて、あなたに愛されてるってことを、再確認できたから。
日本じゃクリスマスはすっかりヤリイベントと化しているけど、それはそれでいいんじゃないかなと思う。一年の終わり近くに、恋人同士や家族が愛を確認するためのイベントがあるって、それはいいことじゃないかな。心の広いジーザスは、それくらい許してくれるだろう。
「……聡明さん。オレ、あと二年は今の仕事続けたいと思います。それで、今年受け持った一年の生徒が卒業するのを見届けたいです。それまで、まだ一人でいてもいいですか」
「駄目だ、と言っても無駄だろう?」
「……オレは、何があっても必ずあなたのもとに戻ってきます」
今夜は、オレもスイッチが入ってるみたいだ。自分から聡明さんにキスを仕掛けて、バスローブの腰紐を解く。なんかもう、どこまでも聡明さんに溺れたい気分。
「――今夜の航くんは官能的過ぎるね」
「嫌ですか?」
「歯止めが効かなくなりそうだ」
「もともとそんな気ないくせに」
オレのたった一人の家族。父親で、上司で、恋人で、誰よりも大切な、愛しい人。
今夜は、ちゃんと言おう。キスをして愛し合って、ずっと離れないでいよう。だって、そのための夜だから。
「愛しています――」
キスを交わしながら互いに愛撫しあって、気分が盛り上がってきたその時。オレの携帯がメールの着信音を鳴らした。
……普通に考えれば絶対に無視する状況なんだが、何故かものすごく嫌な予感がした。
――あれ? なんだろう、何か忘れているような……?
「あの、聡明さん――先にベッドに行っててくれますか?」
「無粋な携帯なんか無視しなさい」
「いえ、そうじゃなくて……聡明さんへのクリスマスプレゼントを持って行きたいから、先に行って待ってて下さい。すぐに行きますから」
そういうことなら、と聡明さんは寝室へ行った。姿がドアの向こうに消えてから、素早く携帯をチェックする。メールの文面を見た時、らぶい気分が一気にぶっとんだ。
『先生、メリクリ★
先生のヌード写真はオレだけの永久保存版にしますから安心して下さい。
今晩はそれをオカズに抜いて寝ます。来年は先生とえっちできるように頑張ります(はあと)』
「か、かざんじいいいいいいいい!!!!!!」
――――――全ての人に、幸せなメリークリスマス!
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