痩せた鎖骨/大学生(19)×大学生(19)/幼馴染

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「今日って大晦日だよな……」
「年越し蕎麦も買ったし、紅白やってるし、そうだろ……蕎麦ってもどん○えだけどさ」
都内某所のワンルームマンション。シングルベッドの上に座り込んでいる男二人。流れる空気は、最高に微妙。互いに目線を合わせない。
「……こうしてても仕方ないよな」
「そうだな……そろそろ、お互いに結論が見えた感じだよな。答えをだそうか」
――ベッド脇のゴミ箱に、ゴムが二個。がっつり使用済みで、口を縛ってある。
「その前にとりあえず、蕎麦喰わねぇ?」


――――二時間前。
「ほー。初詣は彼女と二人で川崎大師、そりゃーよかったなー。で、お前はそれをオレに自慢しに来たと。彼女が居なくて、クリスマスも元旦もバイトなオレに、実家にも帰らずに一人寂しくど○べえで年越しする可哀相なオレに自慢しに来たと。死ねよお前」
「そうやさぐれるなよ。オレだって、初めて出来た彼女なんだよ。それに、自慢とかじゃなくてさ、その……教えて欲しいことが」
「何? もしかして『彼女が初詣に振袖着てくるって言ってるんだけどー、着物ってどうやって脱がせんの?』とか訊くの? いくら二歳からの幼馴染でも殴るよ?」
「そうじゃなくて……いや、結構それに近いかもしれないけど。あのさあ、ぶっちゃけゴムのつけ方がよくわかんねーんだけど、あれどうやんの? 幼馴染のよしみで教えてくれよ」
「やっぱ死ねよお前」
「だってこんなん、訊けんの悠佑(ゆうすけ)だけなんだよ。な、お前童貞じゃないし、ちょっと教えてくれって」
「えー。ていうか、お前イブに童貞卒業したんじゃなかったの? 彼女とデートしたんだろ? 当然ラブホ行きましたよね? 性夜ですから」
「いや、それが……一応行ったんだけど……お互い初めてで、オレ、ゴム上手くつけらんなくて……」
「はあああ?」
「で、まごまごしてたら、すっごい空気が白けるし、オレ、自分が情けなくて萎えちゃって、で……結局」
「それで何もしなくて終わっちゃったって? あー不発弾って萌えないゴミだっけ、今年もうゴミ回収終わってるんですけど」
「上手くない、せめて危険物に格上げしてほしい。そういう訳で、元旦には同じ失敗を繰り返したくないんで、教えて。FF返しに来たついでで悪いけど」
「ぐぐれカス。ゴムの箱にだって書いてあるだろ」
「でも、その通りにやってもなんかうまく行かなかった……」
「どーせ見栄はってサイズでかいの買ったんだろ」
「そ、そんなことはないと思うけど……ちゃんとつけられないと、もし妊娠とかさせちゃったらやばいし……」
「ヤらなきゃいいじゃん。それか、彼女につけてもらえばあ? ピル飲んでもらうとかさあ?」
「……悠佑ぇ」
「……」
「……」
「……はあ、仕方ねえなあ。わかったよ、他ならぬ卓真(たくま)の頼みだしな」
「あ、ありがとう!」
「じゃまあ、とりあえず息子出してみ。実地で教えて欲しいんだろ?」
「う、うん……。……自分で言い出したこととは言え、やっぱちょっと恥ずかしいな」
「知るか。…………あれ?」
「え? 何?」
「お前……もしかして」
「ち、ちげーよ! オレのは仮性! 勃てば剥けるし、剥こうと思えば今でも剥けるから、ほら見ろ!」
「あ、良かった。……でもちょっと気になったんだけどさ、お前、もしかして皮でやってない?」
「え? それ何のこと?」
「聞き返すってことはわかってないな。ちょうどいいや、どうせ勃たなきゃゴム着けらんねーし。ここでオナニーしてみ」
「ええええ!? いや、実地で教えて欲しいとは思ってたけど、そこまでしなくても――」
「だって、全然サイズ違うんだからそのままで着けても意味なくね? それともお前のはそれが最大値なの?」
「そ、そんなことはない! ちゃんと大きくなる! ……それじゃあトイレで……」
「いや、ここで。お前が間違ったオナニーしてないか心配だから見ててやる」
「え、間違ったオナニーなんてあるのか?」
「あるから言ってんの。ベッドの上に来いよ、ほら」
「わ、わかった……。じゃあ、やるから……見てて……」
「おう、しっかり見ててやるから気合入れて扱け」
「……何か、変な気分……」
「……まあな」
「ん……ふぅ……、……勃ってきた……どうだ……?」
「あー駄目だ。やっぱり駄目だ、そりゃー駄目だよお前」
「な、何が駄目なんだよ……そんな全否定しなくても」
「だってお前、皮で擦っちゃってんじゃん。そんなことしてたら皮伸びるぜ? 皮が伸びたら仮性度が上がる、これ常識。仮性から真性にダウングレードしたいのか?」
「ええ!? そ、そうなのか!? じゃあ、お前のやり方は違うの!?」
「違う。皮じゃなく亀頭、これも常識。お前もさっさと切り替えろよ、慣れればこっちのほうが気持ちいいから」
「亀頭……って……どうやんの?」
「そりゃ、弄くるんだよ。こんな風にさ――」
「わ! ちょ、ま、悠佑――っっ! や、やめっ……!」
「実地で教えてやってんだろ? 剥いて出して、で、指で、こう――……気持ちいいだろ?」
「うぁっ……き、気持ちいい、けど……し、刺激強すぎて、痛いっ……」
「ああ、最初はなんかローションとかオイルつけたほうがいいかな。でも今ないし――」
「わ! 悠佑、何を――っ」
「しょうがないだろ、オレの唾液で我慢しとけ。ほら、……これでどうだ?」
「んっ、き、気持ちいい……あ、はぁっ……く、ちょ、これや、ヤバイっ……!」
「!」
「う…」
「……あーあー。お前……ちょっと、イくの早いよ……ゴムつける暇無かったじゃねーか」
「……ご、ごめん……」
「もうちょっと耐えろよ。でないと、彼女にも『早っ!』って笑われるぜ」
「だって、久し振りだし一発目だったしっ、多分明日は大丈夫……た、多分……」
「ふーん。ま、笑われるならまだいいよな。例えばの話だけど、えっちしてて気分が盛り上がって彼女がフェラしてくれてさ、それで耐えられなくてうっかり顔射とかしてみろよ? お前、確実にドン引きされるよ。下手したら速攻別れ話だぜ」
「う……そうだよな……。指でもあんなに気持ちいいのに、フェラなんてされたら、耐えられるかな……オレ」
「だよなあ。――じゃあ、予行演習だな」
「え? うわああ!! ゆ、悠佑っっ……いいよ、そこまでしてくれなくてもいいって!!」
「どうせ、もう一回勃たせなくちゃゴム着けらんねーだろ。いーから集中しろよ、でないとまたすぐ暴発だぜ」
「で――でも、こん、な……のっ……んぁっ……」
「気にすんなよ――……。……ん、ガマン汁が溢れてきた……」
「ふっ……あ、あぁ……す、すっごい、気持ち、いい……っ…」
「お前の、綺麗なピンク色だなあ……やっぱ普段は被ってるからなのかな」
「ば、だ、だから、勃てばちゃんと剥けるってっ……や、そんなに舐めんなっ……ぅうっ」
「だって何かお前の、可愛くてさ。感じどころ覚えとけよ、そうしたら彼女にやってもらう時にどうしてほしいか言えるだろ。相手も処女なら、最初は痛がって入れさせてくれないかもしれないぜ。そうしたら口でイかせてくれって言えよ」
「そ、そっか……わかった……。ふぁ、あっ…いいっ……いっちゃうっ……」
「駄目だ、耐えろ。……んっ、ここ、先っちょ舌先でぐりぐりされんの、どうよ?」
「あっ! はぁ、…うぁっ……ゆ、すけ……それヤバイっ……!」
「……あんまりやるとまた着ける前にいっちまいそうだな」
「あ……、や、やめちゃうの……?」
「本題はこっちだろ。ほら、オレのやるから、自分で着けてみろよ」
「う……うん……前の時は、どうしても途中でひっかかっちゃって……」
「慌てるからそうなるんだよ、落ち着いてゆっくりやれよ――でないと皮巻き込むぞ」
「皮皮言うな! 日本の男の六割は仮性なんだよ!」
「――とか言ってる間に着けられたじゃん」
「――――あ。……うん……なんか、出来た、な……」
「良かったな。じゃあ、続き行くか――」
「え。い、……な、ちょっと、今度は何するつもりだっ悠佑!?」
「ああ、お前かなり溜まってるみたいだから本番前に全部出させてやろうと思って。――ほら、足抜いて、下全部脱ぐんだよ」
「ちょ、続きなら手でイかせてくれればっ――……うわ! お前、何処に指突っ込もうとしてんだよ!? 待てよ、待ってくれ!」
「あーもーうるさいな。お前、前立腺マッサージって知らないのか?」
「前立腺マッサージ? ……って、何それ?」
「読んで字の如く、指で前立腺をマッサージするんだよ。ED治療なんかでもやることのある医療行為。別にケツはホモだけの専売特許じゃないだろ、女だってやるやつはやるし」
「そ、それはわかるけど、でも、何でそんなこと……っ」
「だから、全部出させてやるって。あとあれだえーと、早漏治療。かなり気持ちいいけど耐えろよ」
「そ、そっか……治療、なら……。でも、指なんて入らないよ……」
「入るって、大丈夫。ゴムも着けられただろ、オレを信用しろって。ほら、赤んぼポーズになって力抜いて」
「う、うん……。……んっ……うげ、なんか、浣腸ぶちこまれた感覚……」
「お前がさっき出したのが、ちょうどいいローションになってる。まだきついな……力抜けってば――ほら」
「あ! やっ……な、舐められんの、マジでやばいって……! ひぁっ……あ」
「そうそう、玉しゃぶられんのも気持ちいーよなー。ん、よし、根元まで入った。さて――」
「う……あ」
「前立腺――は、ここか……」
「……はぁっ……な、何だよこれっ……? ぇ、や……っ」
「…………」
「やだ、あ……へ、変だよ、こんなのっ……! こんな、……初めて――っ…」
「……気持ち、いいだろ?」
「あぁんっ、い、いいっ……気持ちいい、よぉ……っ。や、あ、おかしいよ、こんなの――っ……」
「……お前の感じてる顔、……すっげえエロい……」
「いい、いいよぉっ、ああ、あぁん、はぁ、も…イく、やぁ、イっちゃうよぅっ……!」
「乳首立ってる……お前、乳首もピンク色なんだな。なまじな女より可愛いもの持ってんなあ」
「やっ! ……な、乳首舐めちゃ、あ、やぁっ――……」
「……鎖骨も、細くって水が溜まりそう……上半身だけでも、抜けそうだぜ」
「ひぁ、あぁ、だ――め、イ……くぅっっ……んん!!」
「おっと」
「……ぁ」
「……すげえな。一発目より大量だよ……びくびくいって、まだ出てる」
「……ふ……、はあ……ぁ……」
「な、めちゃくちゃ気持ちよかったろ?」
「…………ん……」
「声も出ないか。――で、射精したらゴムは外して、中身が出ないように縛って捨てる、と……卓真、わかったか?」
「……う、ん……」
「ところで卓真、オレにもゴム着けてくれる? お前見てたら勃っちまった」
「……うん……。……あ……」
「何」
「お前、……いいな……剥けてる……」
「気にすんな、オレはマイナー派なんだから。――そうそう、上手く着けられるようになったじゃん」
「……ああ……あの、さ――」
「何」
「これ……予行演習、なんだよな……? 練習であって、セックスしてる訳じゃ、ない、よな……?」
「ああ、そうだよ。お前が明日恥かかないように、幼馴染のオレが体を張ってハウツーを教えてる、それだけだよ――卓真、もっかい横になって、で、足開いて」
「うん……そう、だよな……。ん、ぁんっ……!」
「…ん、……」
「や、悠佑……やめろよ、そんな、アナルなんか舐めんのっ……!」
「しょうがないだろ……もうちょっと濡らさないと、お前が痛いから――……」
「はぁっ……ま、また前立腺マッサージ、するの……か?」
「ああ。今度は指じゃなくてオレのを入れるんだよ、そのためにゴム着けたんだから」
「や……ま、またオレのも勃って――んっ、それは……何の、練、習……?」
「だから、セックスの練習だよ。初めては気持ちが急いて上手くいかないことが多いからさ、女役になって、女の気持ちをわかるようになっとけば、自分がどうすればいいかわかるだろ?」
「ん、わ、わかった……」
「よし。入れるぞ――」
「!! あああっ! ……ふ、太いっ……い!」
「……きつい……入っていかねーな。力抜けってば……抜かないと、乳首責めるよ」
「む、無理っ……こんなの、入らないって……!」
「入る。乳首責めだけじゃなく、キスもするよ、いいの?」
「くっ……む、無理だって、ぁ……っ」
「しょうがないな――」
「ん! んんっ……、……」
「……舌、出せよ……そう。お前、キスの仕方もわかってないのな……そういうとこ、可愛いけど」
「……っ、あ――!」
「……ほら、全部入っただろ。……じゃ、動くよ――」
「ひゃ――や、あぁ、動いちゃ……!」
「……うわ、やばい……すんげえ気持ちいい、お前ん中っ……」
「ぁあん、そ、そこっ、気持ちいいよぉっ……悠佑ぇっ」
「……卓真、可愛い――」
「やぁっ…あ、あぁ、すごい、激しっ…ぃい!」
「やべえ、オレ、とまんねぇっ……!」
「やぁあっ! あ、あ、イかせて、お願い、もう――あああああっ……!!」
「うっ…………!」


――そして、最初の場面に至る訳で。
「……ごっそさん。美味かったよ、ど○べえ」
「……ああ。あ、そのまま置いといていいよ、卓真」
「……じゃあ、蕎麦も食ったし、オレ帰る」
「おいこら、本題から眼を逸らすな」
「だって、明日オレ、デートだし。オレにとっての本題はそれだから」
「お前、オレとこーゆー関係になって、それで明日何事も無く彼女とエッチするわけ? 出来るわけ?」
「こーゆー関係も何も、オレたち幼馴染だろ、それ以上でもそれ以下でもなく」
「ああ、二時間前まではな。しかし今のオレたちは、不純同性交遊関係だ」
「全然面白くない。だからアレは、予行演習だって、ただの練習だって言ったじゃんか!」
「何が練習だ、セックスに変わりはねぇだろ! オレたち、がっつりやっただろうが! お前三回もイった癖に――」
「お前が練習だって言ったんだろ! じゃなきゃ、あんな――あ、あんな……こと……」
「好きだ」
「……はあ?」
「オレ、どうやらお前のこと好きらしい。道理で彼女作っても長続きしなかった訳だ、あーすっきりした」
「な、いきなり何言うんだよ! お前、それって、自分がホモだってカミングアウトしてんだぞ!?」
「その通りだ、オレも今日はっきり自覚した。まあ、なんか前から男で抜けてたから、そうかもとは思ってたが」
「……はあ」
「お前はこんなオレは嫌いか? 卓真」
「……いや、別にお前がホモだってバイだって、幼馴染には違いないし……いいけど」
「いや、オレが訊きたいのは、オレを恋人にしてくれますか? って意味です」
「……だって、オレ、彼女居ますから……十九年間生きてきて、初めて出来た彼女なんだし……童貞卒業したいし……」
「童貞とか包茎とか早漏とか、オレは気にしないぜ? 全然。いぢめがいがあってむしろ大歓迎」
「帰る」
「冗談ですごめんなさい。……まあ、既成事実を作ってから言っても真実味に欠けるかもしれないけどよ。でも、オレ、本当にお前のこと好きだ、卓真。多分、昔からずっと、十七年間好きだった」
「……」
「お前に彼女出来て嫉妬したのはお前が好きだからで、練習とか言ってお前のこと犯しちゃったのも、お前が可愛くてしょうがなかったから」
「……そんなこと、言われても……」
「でもさ、お前、どうして拒まなかったの? 本当に嫌なら、逃げようと思えば逃げられたはずだろ」
「だって、そもそもはオレからゴムの着け方教えてって頼んだ訳だし……」
「軽蔑されても仕方ないし、ドン引きされても仕方ないことやったと思うよ、常識的に考えて。いくら幼馴染とはいえ、絶交ものだよな。でも、お前は受け入れてくれた。それでオレに期待するなって言う方が無理だろ。何を言おうと、オレたちは合意でセックスしたんだよ。それは事実だろ?」
「……なんか、酷い展開だな。なんでオレ、大晦日に親友に追い詰められなくちゃいけないんだ?」
「ちょうどいいじゃん? 明日から新年だし、気持ちを切り替えるには最適だとオレは思うけど」
「……ともかく……すぐには答えられない。時間くれ」
「いいよ。ところで、明日彼女とやるのか?」
「……わからない……けど、多分無理だと思う」
「その方が賢明だな。鎖骨のところ、キスマークがついてる」
「! げ……。お前、さては確信犯だろ!?」
「うん(はあと)」
「あー、もー、帰る! じゃあな、悠佑!」
「もう遅いし、気をつけて帰れよ――――あ、卓真」
「何だよ!?」
「来年もよろしく」
「お断りだ!」

荒々しい音を立ててドアが閉まり、足音が遠ざかる。しかし悠佑がカップ麺の容器を片していると、また足音が近づいて、チャイムが鳴った。ドアを開けると卓真の姿。
「――――どうした、卓真?」
「返すの忘れてた……これ。FF」
「ああ……別にいつでもよかったのに」
「……。……あと、やっぱりこれだけは言っとこうと思って」
「何? オレにもっかい抱かれたい、って?」
「ちげーよばーか。……十二時、回っちまったな……」


「――――今年も、よろしく」

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